ARC東京フォーラム2018 が参加者募集を開始―基調講演にExxonMobil

Submitted by Shin Kai on


ARC は今年も東京フォーラムを、来る7月10日(火)に東京・両国KFC ホールで開催する。このほどその概要が固まり、本日から参加者の募集を開始する。第20回となる今回の東京フォーラムのテーマは「デジタルでセキュアな産業、インフラ、シティへ」(Digitizing and Securing Industry, Infrastructure, and Cities)。節目となる20回を記念して、基調講演にはARC アドバイザリグループ社長兼CEO のアンディ・チャサ(Andy Chatha)が登壇する。また今回は、従来のDCS 制御を中核とするプロセスオートメーションの技術刷新を企図してオープン・プロセス・オートメーションの活動で主導的な役割を果たしているエクソンモービル(ExxonMobil)が基調講演に加わる。講演者として同プロジェクトの中心的人物の一人であるダグ・クシネリック(Doug Kushnerick)氏が来日し、開発と標準化の最新の状況を直接、日本のオートメーションコミュニティ向けに報告いただく予定である。

デジタル変革とプラットフォーム

製造業を取り巻く環境の変化が加速している。デジタル新技術の流入により、ものもプロセスも多様につながり、つなぎやすくするためのプラットフォーム活用とセンサ、設備、機器のインテリジェント化が進行し始めている。IoT、ビッグデータ、AI 技術の活用により、製造現場から収集されるデータから製品の安定生産と効率化、品質向上、安全操業などに有用な情報を生み出す仕組みが次々と提案されている。しばしば「破壊的」とも表現されるデジタル化の技術の動向が、製品や製造プロセス、働き方や組織、更にはインフラや都市をどのように左右し変革してゆくかを注視する必要がある。

ARC のアンディ・チャサは、今回の発表において、オープンでセキュアなハードウエアとソフトウエアの新プラットフォームをめぐって議論する。このプラットフォームは、デジタルエンタープライズの実現を成功に導くための主要な要件の1つとして、ますます重要な役割を果たしつつある。議論の焦点となるのは、大まかに4種に区分されるIoT に関連する新たなプラットフォームであり、これにはデバイス接続(エッジ)プラットフォーム、コンピューティング・プラットフォーム、クラウド・アプリケーション・プラットフォームと分析機能プラットフォームが含まれる。

オープンでセキュアなプロセスオートメーションの新機軸

エクソンモービル(ExxonMobil)が、プラント制御のコアである同社のDCS に関するマイグレーション計画を発表して、2025年までに世界中の同社プラントにおけるDCS の40%を更新・刷新するためにその新機種の要求仕様の決定を2020年に完了する計画であること、そのための基本要件を4グループ27の項目に整理したことなどを公表したのは、2015年の米国ARC インダストリフォーラムでの講演であった。続く2016年のARC フォーラムでは、その計画に即して、「標準ベースのオープンで相互運用性があり、セキュアな」次世代プロセス・オートメーション・システムの実現をビジョンに掲げ、同プロジェクトの管理と概念実証(PoC)でロッキード・マーティン(Lockheed Martin)と組むことを明らかにして具体的な開発の動きが明らかとなった。

その後、オープン・グループのもとでオープン・プロセス・オートメーション(OPA)フォーラムの組織が形成された。同フォーラムでは現在、(エンドユーザ、サプライヤ、システムインテグレータを含む)79社の企業が標準策定に携わっている。オープン・プロセス・オートメーション標準は、公開時には、既存の業界標準規格を活用した「標準の標準」となる見通しである。また、エクソンモービルとロッキード・マーティンは、2018年4月、多数のベンダからのコンポーネントを取り込んだ概念実証システムの開発と検証を完了し、これに続く活動を現在推進中である。

オープン・プロセス・オートメーションは、標準を策定し、標準に基づいたオープンでセキュアで相互運用が可能なプロセス・オートメーション・アーキテクチャのプロトタイプを作り出すための業界活動である。今回、ARC 東京フォーラムの基調講演で、ダグ・クシネリック氏は、その活動を始めた動機と最終ゴールを確認することから始め、概念実証の活動成果を紹介し、現在の開発状況と(標準化活動を推進中の)OPA フォーラムの活動の最新の成果物を披露する計画である。さらに、同氏は、プロジェクトの次のステップと、エンドユーザ企業、サプライヤ企業、EPC、システムインテグレータ企業の参画機会について議論する予定である。

講演者のダグ・クシネリック氏は現在、エクソンモービルの新規事業及び技術の機会創出に関わるチーム組織の一員として、技術スカウトおよびベンチャー活動に携わっている。彼はプロジェクトのビジネスチームの一員としてオープン・プロセス・オートメーションの推進に携わってきた。

オープン・プロセス・オートメーションの開発は、米国から欧州、中東でも開発と実証のための企業連携が拡大しつつある。今回の発表は、同プロジェクトの最新動向を、日本でエクソンモービルの担当者から直接聞く最初の機会となる。注意深い読者であれば、高度な仮想化技術とソフトウエア開発、制御のフラット構造化と分散制御、エッジのインテリジェント化とセキュリティ組込みなどを要件とする今回の技術開発が、プロセスプラントに限らず、いずれファクトリーオートメーションにも波及する先進性を備えていることに気付くであろう。今年の東京フォーラムに期待したい。