メカトロリンク協会の総会から-会員数の増勢と加速するIT/OT の融合

Submitted by Shin Kai on

 

2017年6月2日に東京秋葉原でMechatrolink(メカトロリンク)協会(MMA)の総会が開催され、これに参加した。同総会には会員企業を中心に85社から約180名が参集した。メカトロリンクといえば、従来、製造分野の装置内の制御用フィールドネットワークとして閉じた環境を想定しがちだが、ここでもスレーブの情報がマスタを通り、インターネットやクラウドにつながる時代を迎えようとしている。会合での報告はその変化への対応を随所に感じさせる内容であった。

同協会の幹事長で安川電機執行役員モーションコントロール事業部長の熊谷彰氏は、挨拶で、インダストリ4.0、IIoT などによるスマートファクトリの提案と主導権争いが世界的に進行するなかで、工場の情報系、コントローラ系、フィールド系ネットワークとそれらに対応した機器間のデータ流通のシームレス接続に対する注目が高まり、産業用ネットワーク推進団体間の合従連衡の動きが活発化している状況を概説した。また、スマートファクトリの実現に向けては、プラットフォーム提案の動きに注目し、日本においてもファナックがFIELD システムを、また三菱電機がFA-IT オープンプラットフォームを提案して従来の固有技術にとらわれないオープン接続化に向けた動きを示していることを例に挙げ、これを「自社に足りない部分を取り込んで、スマートファクトリを実現する動き」と捉えた。

センサ・アクチュエータのネットワーク化

メカトロリンクは装置内のコントローラとデバイスを結ぶフィールドネットワーク技術であり、ネットワーク性能が装置性能に直接影響を与えるため、当面、装置外部ネットワークとの接続には課題を持つ。その一方、「スマートファクトリ実現のためには、装置内に使われるフィールドネットワークの情報と、IT 情報系、コントローラネットワークとの親和性が重要になる。また、モーション系以外にも、各種センサ系との情報の透過性、親和性も重要となりつつある。このため、MMA もこの取組みを強化している」という。

MMA はこのほど、センサ、アクチュエータレベルのインターフェース規格IO-Link を強力に推進しているセンサメーカーの独バルーフ(Balluff)と、Mechatrolink/IO-Link ゲートウェイ開発で合意した。同合意に基づき、IO-Link 対応の各種機器のデータをMechatrolink-III 経由で収集(中継コマンド対応) 可能にするゲートウェイを2017年度にリリースする予定である。

またMMA は、システム提案力強化の一環として、日本インダストリアルイメージング協会(JIIA) と、マシンビジョンのメカトロリンク対応に向けて検討を開始することで合意した。イーサネット(IIDC2)対応ビジョンセンサおよびI/O を介した照明を、ビジョンセンサ・アダプタを介してMechatrolink-III に接続するシステムの仕様検討を開始する。同協業にはビジョン系とモーションネットワーク接続の標準化の検討が含まれる、という。加えて12月開催の2017SCF 展におけるデモ展示に向けた協議も開始する。

会員数3,000社を突破-中国・アジアの増勢

次に熊谷氏は、アジアを中心とするFA 市場の状況を俯瞰し、中国・アジア市場を最終利用地としたスマホ、LED、工作機械などの市場向けの投資が活発化する一方、中国市場では自動化、内製化、ローカルメーカの台頭が急進している状況を紹介。特に中国FA 市場では高性能、高機能化とともにネットワーク化への動きが活発であることから、メカトロリンク採用の拡大が続いている。安川電機の中国販売においても、サーボの4割がメカトロリンク対応モデルとなり、1年間で1割以上ネットワーク化が進展した、という。

この結果、2016年度には中国でのMMA 会員数が1,500社を突破した。2016年度(2017年3月末時点)のグローバル会員数は2,956社で、2014年度の2,386社、2015年度の2,746社から順調に増加している。2016年度の会員の内訳は、中国の1,510社、日本の719社、韓国の308社などとなっている。会員数では日本とアジアが2,600社以上を占めており、事務局によれば、フィールドネットワークとしてアジアNo.1 の地位を維持した、とみている。ちなみに2017年5月時点でMMA 会員数は3,000社を突破し、今年度中には3,300社突破を目標としている。

MMA としては、インダストリ4.0、IIoT の技術導入に沿ったスマートファクトリ化の流れと、中国市場をはじめとするダイナミックな市場動向の双方に対応するために、今年度もメカトロリンクを使ったソリューション提案を強化する。そのために、既存製品だけでなく、センサなど装置の周辺デバイスメーカを新パートナとして開拓し、それらの技術を会員企業の技術と統合活用することで具体的なソリューション開発に活かしていく方針である。

2つの特別講演

今年度のMMA 総会では、2つの特別講演が準備され、バルーフ代表取締役の吉田憲司氏が「IO リンクが提供する新しいパラダイム」を、またIoT/M2M 向けの通信プラットフォームの事業で急成長するIT ベンチャー企業ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏が「IoT ビジネス活用最前線~お客様実践事例にみる通信プラットフォーム活用」を講演した。いずれもIoT をめぐる開発のめまぐるしいスピード感を強く印象づける内容であった。