ARC マシナリー指標

Submitted by Shin Kai on

 

ARC はこのほど、世界の産業機械市場の動向を四半期ごとに追跡し分析するARC マシナリー指標(ARC Machinery Index)のレポート発行を開始した。このレポートは、ARC の欧州アナリストグループが中心となって編集し、ARC のアドバイザリサービス(AS)会員企業に読者を限定したARC Insights レポートの形式で発行される。このため、分析の詳細をここにご紹介できないが、世界の産業機械市場の動向を四半期ごとに追跡し、今後の市場を予測するために、日本でもとりわけFA ディスクリート業界のAS 会員企業には有益な資料となることが見込まれる。そこで、今回このブログでその構成概要を少しご紹介したい。

ARC はこれまで十年以上にわたり産業機械分野における市場動向を継続的に調査し報告書を作成してきている。今回発行を開始したARC マシナリー指標は、産業機械の業界関係者が、世界市場の動向を手軽に総覧できるようにすることを目標としている。このため、すでに四半期ごとの世界のオートメーション市場動向レポートとして定着しているARC オートメーション指標(ARC Automation Index)と同様の手法を活用して、データを収集し、市場で確立した統計手法を用いて分析し、グラフ化し、記述する。従って、その基礎となるデータは、株式を市場公開する産業機械業界の大手メーカ(OEM)が四半期ごとに発表する業績値である。

産業機械の6分類

ARC はこのレポート作成に当たり、産業機械の領域の中で特に工作機械、包装機械、重機械、プラスチック加工機械、ロボット、その他の機械に分類している。四半期レポートには、この6つに分類された産業機械ごとに市場動向をグラフ化して掲載するほか、特筆される直近の市場動向やM&A 等の話題を掲載する。マシナリー指標グラフは、産業機械全体市場に関して米州、欧州、アジアの3地域の過去12年間におよぶ上昇下降の市場サイクルを追跡できる全体図に加え、産業機械6分野ごとに世界市場の動向をそれぞれ掲載している。

また、各号において特定の産業機械市場にスポットライトを当て、地域市場ごとの動向を少し詳しく記述する。例えば、11月2日発行号では工作機械を特集しており、簡略ではあるが地域市場ごとの成長率とその要因を記述している。特集では、中国市場の需要の急回復とそれに牽引された日本・韓国・台湾の工作機械メーカの好業績、中国における自動車、航空機、半導体、電子各産業の投資の好調、欧州市場の安定化に寄与するドイツの工作機械、回復に転じる北米・南米市場、さらに工作機械のデジタリゼーションとクラウド利用などが議論されている。加えて、9月にドイツのハノーバーで開催されたEMO 金属加工展会場で欧州アナリストが取材した製品技術や業界コンソーシアム設立の動向などの報告も掲載している。

マシナリー指標の特長

このレポートの特長は、産業機械の世界市場の動向を四半期ごとに手軽に総覧できるところにある。例えば日本の産業機械の業界では、機械カテゴリごとに工業会が設立され、会員から提出されるデータや経産省統計に基づいて月報、半期、年間の統計を集計し、詳細を会員企業に公開する体制が整っている。これにより工業会の会員企業は、それぞれの機械市場ごとに有益な指標を入手することが可能であるが、他方、世界市場規模で横断的に機械カテゴリごとの市場動向を四半期ごとに総覧できる統計は見当たらない。これに対して、ARC マシナリー指標は、産業機械全体をひと括りとして、米州、欧州、アジアの市場のアップダウンサイクルの動向を総覧できる。また、例えば、工作機械の世界動向には、欧州、米国の大手工作機械メーカの業績値に加え、アジアの分類として日本、中国、韓国、台湾の大手メーカの業績値が集計され、統計処理されている。この意味で、ARC マシナリー指標は日本の各工業界から得られる統計数値とは別な視点から、世界の市場動向に関する洞察を提供できると考えている。

世界の産業機械の概況

産業機械市場全体では、2017年は順調な年となる見込みであるが、投資の成長率は2008年のブーム期には及ばない。2016年には自動車および航空・防衛産業で設備投資が伸びた。アジア市場が2017年に大きな回復を見せたのに対して、その他の地域市場の成長率は微増に留まる。とはいえ、総体的に世界の産業機械市場の2017年は前年比で上昇する見込みである。

今後の特集予定

ARC マシナリー指標は、四半期ごとの発行を計画しており、その都度、産業機械全体および6分野の個別市場動向がグラフ化して提供される。今回の工作機械特集に続き、次回以降は包装機械、ロボット、重機械の順に特集が組まれる予定である。またこれとともに、この集計ベースとなる、産業機械メーカの企業リストも順次、拡充する予定で進行している。ご期待いただければ幸いである。