ARC 東京フォーラム開催まで1週間

Submitted by Shin Kai on

 

来る7月11日に開催予定の今年のARC 東京フォーラムまで余すところ1週間となった。フォーラム事務局ではこの時期、会場で配布する日、英の予稿集の編集・印刷手配や講演者が発表を予定する最終稿の入稿と並行して、参加希望者の登録・通知作業が山場を迎え、出展社のロジスティクス、同時通訳者との打合せなども重なり多忙を極める。その慌しさのなかでも、やはり気になるのが参加登録者の集まり具合、ということになる。幸いにも、今年も多くのユーザ企業、スポンサー企業の協力を得て、満席の240~250名程度の登録が見込まれるところまで来ている。この1日限りのイベントの講演のために来日する海外企業の講演者は6人に及ぶ。私見ながら、今回のフォーラムの注目のポイントを駆け足で紹介したい。

基調講演者として来日するARC リサーチ・ディレクタのハリーフォーブスは、ARC が提唱する企業のデジタリゼーションにフォーカスする。そして、デジタルエンタープライズの要件を整理し、その実現のステップを概説する。また、世界のプロセスオートメーション業界で最大の話題となっているオープン・プロセス・オートメーションの動向をお伝えする。直近のニュースでは、エクソンモービルが主導するプロトタイプ開発、標準化プロジェクトに遅れが出ている模様だが、来場者はこの基調講演で、新制御システム開発が直面している課題など最新情報に接するだろう。

クラウド利用のIIoT プラットフォームとアプリ

今回のフォーラムでは、IIoT を巡って、ディスクリートとプロセスの各業界向けにクラウド利用のプラットフォームを提案しているサプライヤの発表が揃う。三菱電機は日本IBM と共同で、ディスクリート業界向けにFA-IT Open Platform を紹介し、FA-IT のインターフェースが生産現場にどれほど重要な役割を果たすことになるかを議論する。そのコンテクストの中で、IBM は、予知保全・品質(PMQ)に対する同社の取組みを紹介する予定である。

また、社会インフラ、プラントの建設・保全プロジェクトなど向けにBIM のモデリング技術を展開するベントレー・システムズは、このほどシーメンスによるクラウドベースのオープンIoT オペレーティングシステムMindSphere のプラットフォーム上で利用可能なMindApp を開発した。今回のフォーラムではそのMindApp を含む発表が予定されている。

他方、プロセス業界向けには、ハネウェルがHoneywell Connected Plant の構成を紹介する。ハネウェルUoP のコンサルティング力やフローサーブなど提携偉業との連携を通じて実現する製油所の予知保全の事例などが含まれる予定である。

エッジコンピューティング、エッジ分析と対策

IIoT のクラウド利用とは異なり、フィールドのエッジ領域、工場・プラント内かその近傍で、機械学習などの先進AI 技術を導入して効率的にデータ分析を実現するエッジコンピューティングが注目されている。フォーラムでは、エッジコンピューティング開発を推進するデルが、エッジ部における新アーキテクチャとその製造業分野における活用事例を中心に発表する。5月にこのブログコーナーで紹介したように、Linux ファウンデーションがIIoT のエッジコンピューティングの簡素化と標準化を目指してEdgeX ファウンドリを立ち上げたが、デルはそのファウンドリのソースコードのベースを提供している。これには十数種のマイクロサービスと、12万5,000 ライン以上のコードが含まれているというから、同社のこの分野での貢献度は他社にぬきん出ている。先行する同社の今回の発表に期待したい。

また、ストラタステクノロジーが、エッジコンピューティングの今後の普及を見越して、エッジデータの保護ソリューションをテーマに、IIoT の進化とデータの重要性、データ保護の手法、シンプルでセキュアな高信頼性エッジベース・ソリューションを実現した同社の導入事例などを紹介する予定である。

化学プラントとICT、火力発電設備とシミュレーション技術

例年、フォーラムで最も注目度が高いのが、ユーザ企業、エンジニアリング企業の発表である。今回は招待講演として三井化学専務取締役で生産・技術本部長の松尾英喜氏に、プラントと人材の将来像をテーマとする「ICT で化学プラントはどう変わるのか?人の役割はどうなる?」と題した発表をいただく。また、SICE 協賛のパネル討論のパネリストとしてIHI プロセスプラントSBU プラントエンジニアリング部制御・電気設計グループ部長の藤田健司氏に「進化する大規模火力発電設備向けLNG 受入基地における訓練用シミュレータのニーズ」に関するご発表をいただく予定である。

さらにフォーラムでは、産業用サイバーセキュリティに関してベイショア・ネットワークスが、またサプライチェーンのグローバル化にともなう生産現場の変化に対応するための情報融合による生産システムの新機軸をテーマに横河電機が発表を予定している。いずれもユーザ企業の関心を集めることだろう。さて主催者としては、今年のすべての来場者にとって情報交流や気づきの場となり、実りの多いフォーラムとなるよう、及ばずながら残りの1週間、力を尽くしたい。